【パタハラ裁判やってます】〜本人訴訟、しあわせのチカラに〜

全方位型労働被害者、元社畜による実話を元にした実話です。ブラック企業で働いている方、これからブラック企業と闘わんとしているあなたへのバイブル

第28話 訴状提出!

めちゃくちゃミーハーですが、最近将棋を見るのにハマっています。

中学生棋士藤井4段すごいですね。AbemaTVに将棋チャンネルがありスマホで無料で見られるのでちょくちょく見てます。


将棋を見ていて思うのは、裁判と将棋は似ているなと。

こちらが主張をすると、それを受けて相手が自分にとって都合の悪い主張をしてくるので、それに対して自分がどういう主張をするのか。本質的な部分で似ているような気がします。


王様(社長)の捨て駒の歩達(俺達)が敵駒となって次から次へと攻めてきている。守りの陣形(法的整備)が薄かったせいで、すぐに自陣まで攻め込まれて気が付いたら時すでに遅し、歩だった駒がと金に成って王手が掛かろうとしている。


王様は、未だに戦局を理解していないようですが^^;



さて、前回の続きです。



竹下先生と打ち合わせやメールをくり返し、ついに訴状を提出した。

ちょっと長いですが以下、訴状の内容です。

(原文から若干の修正や省略、黒塗り、名前の仮名表記等の編集をしています)



訴    状

 

平成2811月■■

 

■■■地方裁判所 民事部 御中

 

原告訴訟代理人弁護  竹 下  ■  ■

当事者の表示 別紙当事者目録に記載のとおり

 未払賃金請求地位確認等請求事件

訴訟物の価額   金793万■■■■  

貼用印紙     万■■■■

予納郵       金■■■■

第1 請求の趣旨

 被告は、原告に対し、439万円及び別紙3

「集計表」記載の各月の未払い残業代に対する、各月の遅延損害金起算日の翌日から支払い済みまで、それぞれ年6分の割合による金員を支払え。


 被告は、原告に対し、417万■■■■円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払い済みまで年5の割合による金員を支払え。


3 原告が被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。


4 被告は、原告に対し、11万■■■■円及びこれに対する平成28年10月■■日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。


5 被告は、原告に対し、平成28年11月から、毎月25日限り、1か月当たり28万■■■■円の割合による金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。


 訴訟費用は被告の負担とする

との判決及び第4、第5項につき仮執行宣言を求める。

 

第2 請求の原因

1 当事者

⑴ 被告は、土木、建築設計及び工事請負業務等を目的とする株式会社である(甲1)。

⑵ 原告は、平成2510月頃、被告に入社し、平成28年10月■■付で被告により違法解雇された者である。


2 雇用契約

⑴ 雇用契約の締結

原告は、平成2510、被告との間で期間の定めのない雇用契約を締結した。


⑵ 原告の賃金

ア 被告における賃金は、毎月20日締め、当月25日払いである。

 原告の賃金の内訳

原告の賃金の内訳は、別紙1「基礎時給計算書」欄ないし欄の通りである(甲2の1ないし22)。

なお、平成28年6月頃、被告に労働基準監督署の調査が入ったようである。そして、被告は、それを受けてか、突如原告に雇用契約書を交付し(甲3)、日付を空欄にした上での署名押印を迫ってきた。雇用契約書(甲3)記載の賃金の総額は、変更前と変わらないが、調整補助給を大幅に減額した上で、職務手当を、突如、「法定時間外労働の割増賃金として支給、およそ6時間分」と定額残業代と位置付けた上で大幅に増額し(そもそも、従前、職務手当について、定額残業代であるとされていなかった。)、さらに、一般的に残業代算定の基礎とされない住宅手当として4万円を計上している点で、残業代の発生を抑制しようとして雇用契約書(甲3)が交付されたものと考えられる。

原告としては、このような不利益変更に応じることはできず、また、雇用契約書(甲3)記載の労働条件が従前の労働実態と整合しないため、押印しての正式な提出を拒み、平成28年8月■■日、雇用契約書(甲3)についての修正要望と質問をする書面を被告に交付した(甲4)。それに対し、被告は、平成28年8月■■日、賃金構成の変更は、労基署の指導により、他社並みにとの指導からおこなったこと、殆どの住宅・不動産会社が営業社員へ残業代を手当しないが、今回の労基署の指導により固定残業代を設けることなどを内容とする回答書面を原告らに交付した(甲5)。原告は、被告の回答が根拠に乏しく不十分であり、納得できなかったため、平成28年9月■■日、追加の質問を記載した書面を被告に交付した(甲6)。それに対し、被告は、平成28年9月末頃、賃金構成については従前に戻したものの、残業代については一切請求しないという記載のある雇用契約(原告がその場で被告に差し戻した為、原告の手元にはない。)を原告に交付した。

また後述の通り、被告は、平成28年10月■■日付で原告を解雇し、同年10月分給与は、一部のみの支給となっているが(甲2の22)、かかる解雇は、後述の通り、違法、無効であるため、別紙においては、変更前の給与額を記載している。

 被告の所定労働時間

ア 所定労働時間

就業規則(甲)は、所定労働時間につき、以下の通り規定する。

 

第■■条(労働時間及び休憩時間)

1項 所定労働時間は、1週間については40時間、1日については60分の休憩を除き、実働8時間とする。

2項 始業及び終業の時刻並びに休憩時間は、次の通りとする。

       1)始業 午前9時

       2)休憩 正午より60分

       3)終業 午後6時

3項 前2項の規定にかかわらず、業務の都合その他やむを得ない事情により始業及び終業の時刻並びに休憩時間を繰り上げ又は繰り下げることがある。その場合には予め当該社員に通知する


イ 休日

就業規則の規定は以下の通りである。

第■■条(休日)

1項 社員の休日数は、年間105日とし原則として隔週土曜日・日曜日・祝祭日及び、その他会社が必要と認めた日とする。

2項 前項の休日は、当年■■月■■日までに翌年(1月1日から12月末日)分を取りまとめて「年間休日カレンダー」で明示する。

3項 業務の都合により他の日に振り替える事がある。

ウ 月間所定労働時間

上記ア及びイを前提とすると、各月の平均所定労働時間数は、以下の通りである。

(省略)


3 時間外・休日・深夜労働の提供

⑴ 原告の仕事の内容(甲の1から3、甲9

ア 平日

始業は9時とされているが、月曜日は全体朝礼が8時15分からあるためそれまでに、木曜日は原告が所属する部の朝礼が8時45分からあるためそれまでに、原告は、■■市A区所在の被告の本社に出社していた

原告は、本社においてメール確認や部長の後藤にその日の業務の事前報告等をして、10時本社を出て、同市B区同市C区所在の被告が運営するモデルハウスに向かったなお、業務標準書(甲8の1から3)において、B区所在のモデルハウスは「モデルハウスB」、C区所在のモデルハウスは「モデルハウスC」と記載されている。

原告は、モデルハウスにおいて、主に、家の間取りなどの図面を描く設計業務や接客業務をおこなそれから訪問営業に出ていたなお、モデルハウスBには、後藤部長来ることもあり、原告ら社員の業務を監督していた。また、原告は、平成27年9月■■日頃以降は、モデルハウスBではなく、モデルハウスCに行くようになったが、そこでも、平成28年1月■■日頃までは次長の相川がいて、原告ら社員の業務を監督していた。平成28年1月■■日以降は、モデルハウスCには、原告の上司が不在となったが、原告は、後藤部長から、電話やメールで、業務内容について指示を受けたり、原告の部下の営業や打合せに同席するように指示を受けたりしていたし、逆に原告から後藤部長に対し、顧客対応について相談したりしていた。

原告は、午後8時頃本社に戻り、メール確認や、業務日報の作成、業務内容の報告、設計業務を行い、その後、退勤していた。

なお、業務日報については、実際の退社時間ではなく、退社予定の時間を記入していた。退社予定時間は、あまりに遅い時間を記載することが憚られたため、実際よりも早い時間を記載していた 土日祝日

原告は、モデルハウスに直行し、8時45分に部の朝礼をおこない、モデルハウスに来場する顧客の対応をしたり、設計業務をおこなったりしていた。土日祝日については、ほぼ毎日モデルハウスBに後藤部長がいて、原告ら社員の業務の監督をしていた。また、モデルハウスCにおいても、前述の通り、平成28年1月■■日頃までは、相川次長がいて、原告ら社員の業務の監督をしていた。平成28年1月■■日以降、モデルハウスCで業務する際、前述の通り、後藤部長から指示を受けたり、逆に相談したりしていた。

ウ なお、業務日報(甲9)については、原告が保管していたデータを印刷したものを証拠として提出している。

⑵ 時間管理の方法

被告は、タイムカードにより、従業員の出退勤時刻を管理していた。

なお、業務日報に退社予定時刻が記載されているが、実際の退社時間ではなく、予定として記載していた。したがって、実際の出退勤時刻は、タイムカードの打刻によるべきである。

⑶ 残業実績

原告の労働時間は、タイムカード(甲10の1ないし25に基づいて算出した。

なお、別紙2「時間・賃金計算書」では、休憩時間1時間と記入しているが原告は、モデルハウスにおいて、一人で業務をおこなうことがあり(以下「ワンオペ」という。)、ワンオペの日においては、来場者(顧客、業者の営業者、宅配業者、保守維持管理のための業者及び総合展示場関係者等)や電話への対応を義務付けられており、外出等も許されず、休憩時間を自由に利用することができなかった。労働基準法第34条第3項は、休憩時間自由利用の原則を定めており、裁判例及び通達も、休憩時間について、自由利用の原則を述べ、労働からの解放を保障している名古屋高等裁判所昭和53年3月30日判決労判299号17頁、昭和22年9月13日次官通達17号。したがって、原告がワンオペであった勤務日については、休憩時間をゼロにし直した上で、未払い賃金等の増額分についても請求する予定であるので、被告に対し、原告がワンオペであった日を開示するように求める。

さらに、原告は、被告に対し、休日割増賃金算定のため、法定休日を明らかにすることも求める。法定休日が明らかになった後、休日割増分についても請求予定である。

原告の労働時間は、別紙2「時間・賃金計算書」の通りである。

⑷ 計算方法

ア 算定基礎賃金

(省略)

4 付加金の請求

前記の未払賃金は、労働基準法第37条により使用者である被告に支払いが義務付けられたものである。

しかしながら、被告は、今まで残業代を一切支払ってきていない。それどころか、後述の通り、被告は、残業代の支払いを巡り対立した原告を違法に解雇した。

本訴訟提起前の、原告代理人と被告の交渉においても、被告は、一円たりとも支払おうとしなかった。

原告代理人が、給与規程や年間休日カレンダー等の資料の開示を求めても、一切開示しなかった。

このような被告の同条違反の悪質性は甚だしく、同法第114条に基づき、請求の趣旨記載の通り、未払いの時間外労働賃金と同額の付加金及びこれに対する本案判決確定の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

 

5 違法な解雇

⑴ 解雇までの経緯

原告は、被告から残業代が一切支払われてこなかったことや、被告から定額残業代制度を導入することを主眼とする新たな雇用契約書(甲)に署名押印することを求められ(日付を空欄とするように求められたこと、さらに、署名押印しないと雇用を継続しないことをうかがわせる内容の発言をうけたこと等の違法、不当な扱いを受けた。そのため、原告は、平成28年10月■日、被告に対し、退職年月日については「有給休暇、代休の消化後」、退職理由については「一身上の都合による。」という内容の退職願を提出した(甲11。なお、退職願を出したことの趣旨は、有給休暇と代休の残日数を確認するとともに、退職日について相談することにあった

それに対し、被告は、平成28年10月■日、通知人に対し、翌日限りでの解雇を通知した(甲12

⑵ 解雇が無効であること

労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定している。

被告は、平成28年10月■日付解雇理由証明書(甲1)の中で、通知人について、「勤務態度又は勤務成績が不良であること(具体的には、給料に見合う稼ぎがなく生産性が低い、数年育成努力したが必要能力も取得できなかった。特に今年に入って受注が無く著しく自覚、自己認識に欠けていた。部下育成に期待し主任クラスに昇格させたが、赤字社員の見本となり大きなマイナスを与えている。業界は今最盛期にかかり社の受注額は予断を許さない状況にあり、これ以上の損失は出せないと判断したので解雇した。)」から、就業規則第■■条に該当すると述べている。

しかしながら、そもそも、原告が所属してきた部門においては、業務内容が、高所得者層向けの注文住宅の設計及び営業という性質上、半期に1件も受注できないことも珍しくなかった。

そのような中、原告は、前期や前々期の受注について、比較的好成績をあげていた。今期も、原告は、1件受注したし、部下と一緒に顧客を訪問したり、商談に同席するなどし、部下が2件受注する助けをした。また、解雇されなければ受注見込みのある案件もあった。この通り、原告は、被告の業績や部下の育成に貢献していた。

その他にも、原告は、各モデルハウスでの集客イベント考案、運営業務を担当していたし、最近では、不動産部部門長の退職により、不動産部が事実上廃部となり、不動産部門業務も一部任されており、他の設計営業部員に比べ、多岐にわたる業務を任されている状況であった。

したがって、原告は勤務成績又は業務能率が著しく不良とは言えず、就業規則第■■条の要件に該当しない。

また、「社会通念上相当である」ということについて、一般的には、解雇の事由が重大な程度に達しており、解雇のほかに手段がなく、かつ労働者の側に宥恕すべき事情がほとんどない場合にのみ解雇相当性が認められる。そうすると、本件において、かかる事情があるとは考えられない。

以上より、被告による原告の解雇は違法、無効である。

 

 結論

よって、原告は、被告に対し、賃金支払請求権に基づき、未払い賃金439万■■■■円及び別紙3「集計表」記載の各月の未払い残業代に対する、各月の遅延損害金起算日の翌日から支払い済みまで、それぞれ年6分の割合による金員の支払いを求める。

また、原告は、被告に対し、付加金請求権に基づき、平成26年11月分以降の未払賃金417万■■■■円と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払い済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

さらに、被告による解雇が無効であるため、原告が被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認することを求める。

解雇が無効であることにともない、未払いとなっている平成28年10月分の賃金の残額11万■■■■円及びこれに対する支払い期日の翌日平成28年10月26日から支払い済みまで年6分の割合による金員の支払いを求める。

また、被告は、原告に対し、平成28年11月から、毎月25日限り、1か月当たり28万■■■■円の割合による金員及びこれら金員に対する各支払期日の翌日から支払い済みまで年6分の割合による金員の支払いを求める。

 

第3 関連事実

1 交渉経緯

⑴ 原告は、平成28年10月■■日、被告に対し、解雇が無効である旨及び平成26年10月分給与(平成26年10月25日支給分)から平成28年10月分給与(平成28年10月25日支給分)までの残業代を請求する、給与規程や休日カレンダーの開示を求める旨の通知書を送付し、同書面は、平成28年10月■■日に被告に到達した(甲の1、2)。

⑵ 原告は、平成28年11月■■日、被告に対し、具体的な残業代額を示して、改めて未払残業代を請求する書面を送付した(甲)。

⑶ 原告訴訟代理が、平成28年11月■■日、被告に対し、架電したところ、桜木弁護士に依頼したとのことであり、同日、桜木弁護士から、裁判で解決したいとの受任通知が届いた(甲16)。

⑷ 原告は、裁判外交渉で解雇については速やかに解決しようと被告代理人に連絡したが、解決に至らず、解雇無効、残業代の両方の件について、訴訟の提起に至った。

 

2 事業場外みなし労働時間制の適用がないこと⑴ 被告は、原告は営業職であり、事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2)が適用されるため、残業代が発生しないと主張するものと考えられる

しかし、以下の通り、原告に事業場外みなし労働時間制が適用されないことは明らかである。

⑵ モデルハウスにおける勤務について

ア そもそも、モデルハウスでは、複数人の営業設計部社員が設計や接客の仕事をしており、事業場に当たるので、事業場外みなし労働時間制の適用はない。

イ 仮に、モデルハウスが事業場に当たらないとしても、モデルハウスにおける勤務は、以下の通り、「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)にあたらない。

(ア) 昭和63年1月1日労働基準局長通達1号について

 同通達は、以下の通り、事業場外みなし労働時間制の趣旨と事業場外労働の範囲について説明している。

() 趣旨

「イ 趣旨 事業場外で労働する場合で、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務が増加していることに対応して、当該業務における労働時間の算定が適切に行われるように法制度を整備したものであること。

() 事業場外労働の範囲

ロ 事業場外労働の範囲 事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。

[1] 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

[2] 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

[3] 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合

 本件におけるあてはめ

モデルハウスBには、後藤長がいることが多かった。また、モデルハウスCにおいても、平成28年1月■■日頃までは相川次長がいた。そうすると、上記「[1]何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合」にあたる。

また、原告は、モデルハウスにおいて勤務している際、被告支給のパソコンや携帯電話で後藤部長と連絡をとったり、後藤部長から指示を受けたりすることが良くあり、上記「[2] 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合」にもあたる。

さらに、務標準書(甲8)中の「一日のルーティンワーク 5.本社での業務」に、「設計プランニング・CAD等一切の業務は原則モデルハウスB&モデルハウスCで行う事とする(平日でもお客様は展示場に来場されます。営業マンが本社にいても無利益。)」と記載されている通り、原告は、モデルハウスに業務命令で行き、勤務していた。したがって、上記「[3] 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合」にあたる。

なお、業務標準書は、後藤部長から原告らに周知されていた(甲17の1から3)。

(イ) 阪急トラベルサポート事件最高裁判決(最高裁判所第2小法廷平成26年1月24日判決、甲18について

a 昭和63年1月1日労働基準局長通達1号が定める上記[1][2][3]に直接は該当しない場合でも、事業場外みなし労働時間制が適用されない場合が存在する。すなわち、ツアーの添乗員への事業場外みなし労働時間制の適用を否定した阪急トラベルサポート事件控訴審判決(東京高等裁判所平成23年9月14日判決、甲19)は、「労働時間を算定し難いとき」について、「就労実態等の具体的事情をふまえ、社会通念に従い、客観的にみて労働時間を把握することが困難であり、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合」と定義した。

そして、上記最高裁判決は「労働時間を算定し難いとき」にあたるかどうかの考慮要素として、「業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等をあげている。

b 本件におけるあてはめ

前記の通り、原告は、モデルハウスに業務命令で行き、勤務していた。

原告は、本社を発つ際、行き先表にどこのモデルハウスに行くか、どこに訪問営業に行くか、帰社予定時間などを記載していた。そして、社長、後藤部長はもとより、全社員が閲覧可能となっていた。

原告は、直接、あるいは被告支給のパソコンや携帯電話で、後藤部長と連絡をとるなどしていた。また、原告は、業務日報(甲9)に翌日の予定を記載した上、後藤部長に提出しており、モデルハウスで勤務することを事前に報告していた。さらに、業務日報(甲)において、当日の実際の業務内容を記載し、後藤部長に提出しており、モデルハウスで勤務したことを事後にも報告していた。

監督者である後藤部長がモデルハウスBにいることが多かったことや、モデルハウスCにも相川次長がいたこと、相川次長がいなくなった後も後藤部長から指示を受けたり、後藤部長に相談していたことも考えると、モデルハウスにおける業務について、会社が、原告の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは考えられず、労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらない。

(ウ) 小括

以上の通り、原告のモデルハウスでの業務には、事業場外みなし労働時間制は適用されない。

⑶ 訪問営業について

訪問営業そのものは、事業外における労働に当たると考えられる。しかし、訪問営業は、以下の通り、「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)にあたらない。

ア 昭和63年1月1日労働基準局長通達1号の[1][2][3]について

原告は、訪問営業の際、適宜、後藤部長被告支給の携帯電話で連絡をして、相談をしたり、指示を受けたりしていたのであるから、[2] 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合」にあたる。

また、原告は、業務日報(甲)に翌日の訪問営業先や時間の予定を記載して、後藤部長に提出して、後藤部長からの訂正がない場合、その通り、業務をしていたし、モデルハウスから訪問営業に出る際にはモデルハウス備え置きのホワイトボードに訪問営業先を記載していたのであるから、被告による指示のもとで業務をしていたといえる。したがって、「[3] 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合」にもあたる。

イ 阪急トラベルサポート最高裁判決(最高裁判所第2小法廷平成26年1月24日判決、甲18)について

原告は、被告から支給された携帯電話を持ち、いつでも後藤部長から連絡を受けられる状態であった。そして、携帯電話で後藤部長に相談したり、指示を受けたりしていた。

原告は、前記の通り、業務日報(甲)に翌日の訪問営業先や時間などの予定を記載した上、後藤部長や相川次長に提出しており、事前に業務の予定を報告していた。

さらに、業務日報(甲9)において、当日の実際の訪問営業先や時間について記載し、後藤部長や相川次長に提出しており、事後にも報告していた。

本社の行き先表やモデルハウスのホワイトボードに訪問営業先を記載していた。

これらのことからすると、訪問営業業務について、被告が、原告の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは考えられず、労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定しがたいとき」に当たらない。

ウ 小括

以上の通り、原告の訪問営業業務には、事業場外みなし労働時間制は適用されない。

⑷ 結語

以上の通り、原告の労働には事業場外みなし労働時間制は適用されない。


以上



訴額については、判決まで今後発生する給料額(バックペイ)を12ヵ月分と仮定した額と未払残業代額元本としています。付加金は含みません。

提出の証拠等についてはまた別の機会に解説しようと思います。





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