【パタハラ裁判やってます】〜本人訴訟、しあわせのチカラに〜

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第114話 一部弁済供託と付加金

弁済供託を無効にすることはできないだろうか。


いろいろ調べてみると、弁済供託は原則として債務全額であることを要すること、履行遅滞にあるときは遅延損害金も併せて供託すること、全額でない場合には当該一部についても弁済の効果は生じない(不足額が僅少でない限り)ことが分かってきた。

ただ何を全額とするかは、判決が出ていない以上難しいところ。

先生に聞いてみよう。

ご質問の件ですが、難しい論点です。

参考資料として、交通事故の損害賠償請求における弁済供託の判例を送ります。この判例では原則として、債務の全額であることを要し、全額でない場合には当該一部についても弁済の提供及び供託の効果は生じないが、提供及び供託を無効とすることがかえって信義則に反する場合には、有効な提供及び供託となるとされています。

「債権債務関係に立つ当事者間の公平にかなう」かどうかという視点から検討すべきであるとの基本的立場を明らかにし、加害者が、一審判決で認められた全額を供託した場合には、控訴審で損害額が増額されても、供託は一部弁済として有効であるとされており、その限りで、供託が有効とされる要件を緩和したといえます。


この判例の解説書では、
一部の弁済供託を有効とすることが公平にかなうと判断した理由として、
①弁済供託され、供託された金額が、第一審判決によって認容された損害賠償金の全額であって、単に債務者が相当と思う金額というのではなく、一定の客観性が担保されたものということができること
②債務者は、訴訟の判決が確定して初めて自己の負担する債務の全額を知るという立場におり、本件のような弁済供託及び供託を無効とすると債務者に対して難きを強いることになること
③これに対し、被害者(債権者)は、提供された金員を一部の弁済として受領し、供託された金員を一部の弁済として受領する旨留保して還付を受けることができ、そうすることによって何ら法的不利益を受けるものではないこと
④最終的に確定した債務の全額に比較して、提供額供託額が相当と考えられる程度を超えて低かった場合などは、弁済が無効とされる方向とされています。

以上を踏まえますと、本件では、上記①④の点では、弁済供託が無効とされる方向で、②③の点からは、有効とされる方向といえます。

なお、本日担当裁判官と電話する機会があり、
その際に、裁判官は、原告側が受領拒絶した場合に弁済供託は有効とされることを前提として話をしていました。
もっとも、上記①④の点を強調することにより、弁済供託は無効であると反論することは考えられると思います。

との返答がきた。

可能性がなくはないが非常に厳しいようだ、、、。

不法行為による損害賠償の場合であれば判決確定前に客観的に債権額を算定するのが困難だから客観性のない供託金を拒絶するのは一定の理由は見出せる。未払い残業代請求は支払われるべき給与の支払いを求めているのであって、上限額は分かっているし実際の判決との差額も損害賠償請求みたいに大きくなることは無いだろう。付加金は本来発生しない方がいいものであるし、任意かつ早期の履行を促すという付加金という法律の趣旨が今回の一部弁済において寄与していると言っても過言でなく非常に理にかなってしまう。
一部弁済であることを留保して受領することを宣言すれば、受領した場合の不利益がないので、無効を訴えたところで、裁判官に難色を示される可能性は非常に高い。
債務の本旨に基づかない弁済という理由のみで受領拒否する正当性はかなり弱いと言える。

とりあえず一旦受領を拒否するが、裁判官が難色を示すようであれば一部弁済を受け入れて、残債権について引き続き付加金を求めていく方向でいこうと思う。



次回、弁済の充当についての順番について書いていきます。
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