取締役の犬飼氏(ペロ)から返信メール。
書類は明日までに準備してもらうように、今、出先から事務に頼んでおきました。明日の夜19時にパパさん家の近くのファミレスで会えませんか。
おー!!就業規則、賃金規程が手に入る!
そして退職金規程がパパがもっていたものと照合し、中身に相違がなければ現行適用されているものという事実が形成できる。
いいぞ、ナイスだぞ、ペロ!
喜んで明日の19時に会いにいくよ!
次の日、
仕事を早めに切り上げ、最寄駅でパパと待ち合わせして合流。パパにペロからLINEがきていて、ペロはもう先に着いているらしい。
いざ、ご対面!
パパ:犬飼くん、久しぶり。
ペロ:パパさん、、みんなびっくりしてるぞ。なんでこんなことしたんだ。相談してくれたらよかったのに。
こちらが代理人の方?
俺:どうも、犬飼さん。はじめまして。俺と申します。実はパパさんの義理の息子です。
ペロ:へ?義理の息子さんなの?どうも犬飼です。末期株式会社の取締役をしてます。
(ペロは弁護士とか社労士とかが来ると思っていて身構えていたらしく、少しホッとした様子だ)
パパ:そうなんだよ、娘婿でね。会社を辞めるっていう話は直接してないんだけどね、うちの娘が聞きつけてきてな、話をしたらこれはおかしいぞってなってね、労働問題に詳しいから世話になってるんだ。
ペロ:まあ、まあ、いきなり堅苦しい話もなんだしとりあえず座って、何か注文しよう。
パパ:俺はドリンクバーでいいよ。俺くん、好きなの頼んで。俺が払うから。
俺:僕もドリンクバーにします。あと、料金は自分で払います。それが報酬ととらえられてしまうと非弁行為になっちゃうので。(弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士義務を行うこと。弁護士法違反。)
ペロ:え?ドリンクバーなの?えっと、俺はビール飲みたいんだけど、飲んじゃっていいかな?息子さん?大丈夫かな?
(これから大事な話をしようってのに、ビール飲むのかwふざけてるなw饒舌になって、あれこれ口滑らせちくれたら儲けものだ)
俺:ええ、構いませんよ。遠慮なくやっちゃって下さい(^ ^)
そして、ペロはうまそうにビールを飲み始めた。
俺:それでお願いしていたものは?
ペロ:ああ、ここに。
俺:拝見してよろしいですか。
ペロ:どうぞ。
俺:・・・。たしかに。こちらの持っているものと相違ないですね(本当は退職金規程しか持ってないけど)。こちらはいただけますか。
ペロ:印刷したものなので、お渡しします。
俺:ありがとうございます。(これさえ手に入ればこっちのものだ。今日の目的は果たした。)
ペロ:ところで、今、録音とかしてない?
俺:してませんよ。録音するなら前もって録音しますって言います。騙しうちするようなことはしないので安心してください。
ペロ:そうですか、こちらも腹を割って話そうと思うからね、今日はお互いそういうのはやめよう。
俺:もちろんです。
ペロ:パパさん、この業界は狭いよ。すぐに噂は広まる。会社辞めてもこの業界にまた戻ってきてまだ働くつもりなら、こういうやり方はよくないんじゃないか。
パパ:けどなぁ、退職金を一銭もよこさないつもりだ、中退共からもらえるお金は別だけど。会社からは一銭もないんだ。これじゃあこうするよりないだろ。
ペロ:義理の息子さんにも聞いてほしいんだけど、会社もこのコロナ禍で売上が相当厳しい。前年の5割、3割なんて月もある。それでも借入金の返済もある。いろいろ支払いもある。これが会社の現状なんだ。
パパ:会社の売り上げの状況は知ってるよ。
ペロ:本当にもう火の車なんだ。これで売り上げから退職金支払ったら他のもの払えなくなって会社潰れるって状況。
パパ:本当にそんなに金がないのか?
ペロ:新型コロナで日本政策金融公庫から無担保で低利率で運転資金を1000万程借りられた。社長は、他の利息の高い借入の返済に充てようとしてたけど、、、俺はちょっと待ってくれと言って、300万円は従業員のためにお金として確保してもらったんだ。
この中からパパさんに150万円退職金としてとってもらって、残りパパさん以外の退職金原資に引き当てたい。本当は若い者にもっと払ってやりたいけど、こうなった以上パパさんが一番パイを持っていってよいように考えてる。それで納得してもらえないだろうか。悪い話じゃないと思うよ。
パパ:うーん。。。そうかぁ。
ペロ:こんな会社の状況でついこの間まで一緒に働いてたんだから分かるだろ?
割りを食うのは若い奴らなんだ。役員として俺も経営を考えなきゃいけない。これで納得してもらえないのはちょっと酷いよ。
俺:あの、お言葉なんですが。何やら勘違いをされておられるようなので言わせてもらいます。
会社を辞めてほしいと言い出したのらそちらで、会社側としては、固定費すなわち人件費を削減して財務体質を改善を図りたいたいということですよね。
結局、今のキャッシュフローのままではいずれは立ち行かなくなるので。
ペロ:まあ、そういうことになるのかな。
俺:こちらとしては条件次第でそれに応じる用意があります。それで退職金規程があるので、規程通り正当な金額を払って下さいという話をしているのであって、減額するというのは約束違反です。こちらを何か不当な要求をする悪者みたいに言われるのはお門違いですよ。会社の窮状も犬飼さんの立場もよく分かりましたし、同情もしますけど、支払っていただく必要があります。
ペロ:そうかもしれないが、経営する側としては、パパさんのことも皆のことを考えなければいけないんだ。
確保したお金の中からパパさんに半分払って、あとは下の者に年功順に分けて、俺にはいくらも残らないな。
俺:それは、皆で我慢して不幸を分担することですよね。この場合、ババは誤魔貸社長が引くべきだと思うのですが。
コロナ禍が終われば業績が劇的に改善するものとも思えませんし、このままじゃ犬飼さんも全く退職金がもらえない恐れがあるわけで。得がないように思います。明日は我が身ともメールで仰ってましたよね。
ぶっちゃけ犬飼さんは、こちら側、つまり請求する側にまわろうとは思わないんですか。
さあ、ペロの寝返りはあるのか。
つづく。
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