俺:犬飼さんは、こちら側、つまり請求する側にまわろうとは思わないんですか。
ペロ:全く思わない。
俺:そうですか。残念です。
(マジかペロ。こんなほぼ死に体の会社と心中するのか。見上げた愛社精神だよ。アディオス)
ペロ:こんな事になるなら、パパさんも経営に入ってしっかりやってくれてればよかったんだよ。
パパ:俺はそういうタチじゃないから。数合わせで頼まれて、名前を貸しただけだ。
ペロ:俺より先に取締役になったのだから会社の状況は知れたはずでしょ。俺が取締役になって帳簿を見た時にはもうボロボロの状態だったよ。社長も会社から使途不明の借入金なんかもあったし。それについてはパパさんにも責任あると思うんだよ。
パパ:あの社長は俺の言うことなんて聞かないって。俺を経営に入れようなんて気はさらさらなかったと思うし。
ペロ:みんなの待遇について代表して社長に不満を言ってれたこともあったじゃない。じゃあ、お前やってみろ!って言われた時にやってくれたらよかったんだ。
パパ:あれは怒って帳簿を投げつけてきただけだよ。
(いろいろあったんですねぇ)
俺:話が脱線しつつあるので話を戻しますが、退職勧奨の合意書をいきなり騙し討ちのように送りつけたり、この度やね会社のやり方は酷いと思います。
通知書でも伝えたとおり、今月末での退職には応じることはありません。有給休暇を残日数分取得して来月28日まで休みます。その間に条件面の話し合いができたらと考えてます。
ペロ:今回のここまでの話は会社と社労士がやったことで俺はあまり関与してなくて、後でいろいろ見聞きして会社の対応は申し訳ないと思う。
有休についてはとってもらって構わない。
なんならその後も雇用調整助成金の特例措置なんかで賄えるから、数ヶ月は雇用を維持しても構わない。会社にも来なくていいし仕事もしなくていいけど給料は満額出すから。
それをさっきの150万に加えてプラスアルファってことで納得してもらえないかな。それでだめなら裁判でもなんでもしてもらうしかない。
俺:と、仰ってますがどうしますかお義父さん。
パパ:いや、有給休暇取ったら即辞める。もう会社にいたくない。
(辞める意思固い)
俺:ということなので、来月28日で辞めるつもりです。退職日2週間前までには退職届を送ります。例え条件が合わなくても条件については留保しておいて退職はします。
退職金については、満額請求するつもりです。それと合意なく下げられた給与についても利息含めて請求するつもりです。だめなら訴訟することになると思います。
ペロ:とりあえずそちらが希望する条件を送ってもらえると助かる。それをもって社長とどうするかを話するから。
俺:分かりました。では今日は失礼します。ありがとうございました。
ペロ:俺はまだ飲んでいくので、ここでお別れでいいかな。
パパ:ああ、ごゆっくり。
ペロはそんなに悪い人には思えなかった。
本当は自分だって退職金を請求して辞めたい気持ちもあるけれど会社も部下も裏切れない。
職なくなってもコロナ禍的にも年齢的にも再就職大変だろうし。
おおよそ沈み逝く船と知りつつも、会社に残り立て直すという選択肢しかとれないのかもしれない。
長年一緒に共に闘ってきた仲間と袂を分かつことになったパパも少し複雑そうに見えたのだった。
つづく。
スピンオフ
本編