さて、労働基準監督署からの是正勧告で、会社がついに動きに出ることになります。
労基署の調査が入り数日後、俺が外回りを終え本社に戻ると待っていたように総務部の課長と直属の上司である営業部の部長が声をかけてきた。
「まあ、建前みたいなものなんだけど、急いで労基署に出さないといけないからこれにサインして提出して欲しい」
渡されたのは36協定のひな形だった。
会社は労働者側の代表者に俺を選んできたのだ。
今考えると笑える話だ。。。
なぜ俺に会社から白羽の矢がたったのかであるが、課長以上は管理監督者であり会社側に近い存在で代表になるのには問題があること(法律上厳密にいえば違うのだが、会社はそう思っていた)、それを除くと3年とはいえ若手社員の中で社歴が長い方であったこと、これまで会社や上司の意向に(表面上は)忠実でまじめに取り組んできたこと、どの社員とも円満で社内では信頼が厚い方であり、仮にこの36協定が他の社員に明るみになっても文句が出ないとふんでのことだと思う。
俺は辞めた社員2人からの未払い請求や申告の件もあり、ここでこれを拒んで会社から何か謀反を企てる予備軍だと思われるのはその時点で得策ではないと考え、俺は署名をすることにしたのだった。
36協定がなんたるかは知っていたし、過半数代表者は文字通り、労働者から民主的に選出されなければならず会社が指名して締結させたとしても後に無効だなんだと訴えれば簡単に潰せるという思いがあった。
内容的には通常のひな形でありとりあえず問題がなさそうだったため、署名し印鑑をつき控えのコピーをとり提出をしたのだった。
つづく