後に締結された労働協約を遡及して適用することは出来るのか。
なんかそんなような判例があったような。
それで調べてみるとすぐに答えが見つかった。
【平尾事件】 最高裁第一小法廷平成31年4月25日判決(労判1208.5)だ。
概要:Y会社は経営難に陥ったことから、A労働組合と合意し、賃金の一部の支払いを延期した。 Y会社は経営難を立て直せず、労働者Xの所属する部門を閉鎖することとなった。労働者Xは、A労働組合の組合員である。 A労働組合と会社Yの間の労働協約によって、3回も賃金請求権をカットし、さらに組合を通して債権放棄の合意をし労働者Xが、労働協約は無効であるとして、その賃金の支払いを求めた事例である。
上海香港銀行事件、朝日海上火災保険(高田事件)判例を引用し、『具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約の遡及適用により処分又は変更することは許されない』(最高裁昭和60年(オ)第728号平成元年9月7日第一小法廷判決・裁判集民事157号433頁、最高裁平成5年(オ)第650号同8年3月26日第三小法廷判決・民集50巻4号1008頁参照)として、
協約の締結前にそれぞれ具体的に発生していたものについては、放棄の効力を認めず、また、労働者Xによる特別の授権がない限り、労働協約により支払を猶予することはできない。と結論付けた。
すぐに労働基準監督官に、テレテレテレフォンし伝えたのだった。
最高裁ですでに確立された法理。
しかし、その反応は、期待と予想に反するものだった。
監督官:判例の存在をお聞きして、我々も調べ協議しましたが、労働基準監督署は判例について評価したり、それを個々の事例に当て嵌めて判断し指導することは出来ません。
元社畜:いやいや、同様の最高裁判例が3件も出てるんですよ。しかも『具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約の遡及適用により処分又は変更することは許されない』という部分は原理原則で、個別の事件内容によって変わったりしないものでしょう。
監督官:とにかく判例の評価は出来ないので、判例の解釈を示した上級庁の通達とかがあれば動けますけど。我々も探してみましたけど見当たりませんでした。最高裁判例が3回も出ていたらありそうなものなのですが。
元社畜:じゃあ、厚労省に行政情報開示請求で照会します。
しかし、やはり通達のようなものは見つからなかった。
それには、この国の闇の部分に触れる驚きの理由があったのだった。
つづく。
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