今後、訴訟になることまで見据えると、どうしても早めに入手しておかなければならない証拠がある。
俺としたことが、一番重要な勤怠の記録が一部足りていないのだ。
当社はタイムカードは無くて、グループ会社独自の勤怠管理システムソフトでPCの入り切りを記録している。それと自己申告での勤怠時間入力を突き合わせ不自然な乖離が無い場合、上司が電子認証することにより勤怠管理している。
もちろん過去の勤怠記録も遡って閲覧できるのではあるが、会社の申し入れにより約1年前の2022年3月に給料計算の締日がそれまで毎月10日締めだったのを、月末締めに変更し、これに伴い勤怠管理システムがアップデートされたため、その影響でそれ以前の勤怠記録が遡れなくなってしまっていたのだ。
過去分をいつでも遡れることに、すっかり安心していて、印刷やデータで保存していなかった俺はこれは誤算で非常に参ってしまった。
給与計算の締日の変更自体は、確かに月初始まり末締めの方が明瞭で分かりやすいし、それ自体には何も不利益が無いので俺としては良いことだと思っていたし、当時は特に何も疑問に思わなかった。
しかし、今思えば、システム変更にすごく労力と費用がかかるはずなのに、ただ分かりやすくなるということだけでやるというのは大いに疑問を感じるべきだったのではないかと思う。
実はこの締日の変更は会社として別の思惑があったのではないだろうか。
俺のたった1人の反乱によって、外勤手当の不利益制度変更は、当社ではギリギリのところで食い止められている。 他の支社やグループ会社では無抵抗であったため2022年4月から実際に不利益変更の制度がスタートしている。 当社では、外勤手当の制度変更は今のところ起きておらず締日の変更だけ起きたから全く実感が無かったが、この制度変更と締日変更はほとんど時を同じくしていて、いわばセットだったということが窺える。
そこに思いを巡らした時、俺の中で、あらゆる点と点が一気に繋がりはじめた。
思い出してみてほしい。「途中の残業代」のことを。
あくまで推測の域を出ないものの、
もしかすると会社は、この途中の残業代が発生し未払いとなってしまっていることに気づいていたということではないだろうか。
そして、定時以降は実残業計算にしなければならないと思ったが、ただ実残業計算にしたのでは今後膨大な残業代支払い負担が発生してしまう。
そこで、既存の外勤手当が実は定額残業代だったという体にして実残業化に伴い廃止することにより、この残業代負担をペイしてしまおうと。
そう、考えたんじゃないだろうか。
そして、途中の残業代が発生している期間の勤怠記録を見られなくして、万が一これに気が付く労働者が出てきても、請求が出来ないように勤怠記録を隠蔽をした。
単に過去の勤怠記録を見られないようにしたのでは、疑問や不審が生じるので、わざわざ締日の変更をし、勤怠管理システムのアップデートに伴って見られなくなったようにカモフラージュした。
そして、消滅時効にかかり徐々に消えていくのを高みから静かに見ているのか。
もう一度言っておく。あくまで推測だ。
でもこう考えると、ゾクッとするほどに全てが繋がる。 事実だとしても100%認めることは無いだろうが、これが真相だとすれば恐ろしい。 当社、支社、グループ会社の外勤労働者の残業代、何億?何十億?いや何百億規模かもしれない。これを隠蔽し確信的に消しにきてるのだ。
許せない。
気づいてしまった以上、こんな横暴は許すわけにはいかない。 なんだか分からないうちに労働条件が引き下げられたグループの従業員を勝手に背負って、会社の裏にある何か強大なものに立ち向かわなければならない。出来るだろうか。
そして、なんとか見られなくされた勤怠記録を入手しなければ。
つづく。